やんばる食形態分類表について
・この食形態マップで基準としている「やんばる食形態分類表」(以下、本分類表とする)は、平成28年に北部地区の病院や施設で勤務している栄養士、管理栄養士を対象に行ったアンケート調査によって、北部地区で提供されている食形態の概要を把握したうえで、日本摂食嚥下リハビリテーション学会の「嚥下調整食分類2013」(以下、学会分類とする)、青森脳卒中地域連携パス協議会の「嚥下食対応表」、能登脳卒中地域連携協議会の「食形態マップ」、石川県栄養士会の「Iスケール」を参考に、沖縄県北部地域に特化した地域汎用性の高い食形態の分類表として、YDWGが作成したものです。
・本分類表では北部地区における汎用性の向上や簡便化を図るうえで、日本摂食嚥下リハビリテーション学会の発表した学会分類とは異なる点がいくつかあります(以下記載)。したがって本部類表に該当する分類コードを、学会分類の分類コードとして評価することはできません。「栄養管理計画書」など学会分類コードの表示が必要な場合は、本分類表のコードを記載せず、フードスタディなど各自で食形態評価を行ってください。
・本分類表のコード番号は施設間連携のための共通コードであり、必ずしも摂食・嚥下障害の重症度に対応した食形態の順序ではありません。
・便宜上、他の分類との相関、各分類コードに相当する市販の食品名を記載していますが、整合性や対応が必ずしも一致するものではありません。
本分類表と学会分類との相違点
以下、各コード分類における、本分類表と学会分類との相違点を記載します。
【コード0、1】
・特に学会分類との相違点はなし。
・嚥下障害を有する者に対し嚥下評価や嚥下訓練として利用している場合に表記。
【コード2】
・副食について:学会分類では、コード2の調理方法として、「ミキサーをかけてなめらかにし、かつ凝集性を付加したもの」としている。しかしアンケート調査の結果、とろみ剤を付加しないミキサー食を提供しているところが多く、本分類表では、「とろみ剤を付加せず、ミキサーにかけただけのもの」もコード2として分類し、レシピ詳細にてとろみ剤の使用の有無を記載した。
・主食について:学会分類では、「粥をミキサーにかけただけものは、コード2に適した食品にならない」としている。しかし、アンケート調査の結果、粥をミキサーにかけ、とろみ剤や酵素剤使用していない場合が多く、本分類表では「とろみ剤や酵素剤を付加せず、粥をミキサーにかけただけのもの」もコード2として分類し、レシピ詳細にて酵素剤やとろみ剤の使用の有無を記載した。
・コード2-1は副食に細かくミキサーをかけた均質なもの、また、主食に酵素剤を使用してべたつきをなくしたもの、コード2-2は粗めにミキサーをかけた、柔らかい粒などが残る不均質なものとしている。
【コード3】
・副食について:学会分類では、「形があり、舌と上あごで押しつぶして嚥下でき、多量の離水がないもの」としており、コード3自体に分類はないが、本分類表では調理法から以下の3つに分類している。
➀3-S(ソフト食):食材をミキサーにかけてから、ゲル化剤で固めて成形したもの。なお、ミキサーにかけたものをゲル化剤で固めたもので、成形せず、舌と上あごで押しつぶす必要がないほど柔らかく、丸飲みできるまたは丸のみすることを想定しているものについてはコード1に分類した。
➁3-K(きざみとろみ食):比較的柔らかい食材を細かく刻んで中間または濃いとろみをつけたもの。なお、きざみの大きいものや食材の硬いもの、とろみをつけないものについてはコード4に分類した。
➂3-Y(やわらか食):食材を選んだり、加圧煮込みや冷凍含浸法、酵素による軟化調理など、調理法を工夫したもの。
・主食について:学会分類では、「水分がさらさらの液体でない様配慮した3分粥、5分粥、全粥など」としており、本分類表ではとろみ剤を使用した3,5,7、全粥およびゲル化剤を使用した全粥ゼリーなどを対象としている。また、とろみ剤やゲル化剤を使用しないものはコード5に分類している。
【コード4】
・副食について:きざみ食について学会分類では、「歯茎でつぶせないほどの硬いものや、とろみが薄いものは嚥下調整食として適当でない」としており、さらに「きざんだものが歯茎でつぶせる程度の硬さで、中間または濃いとろみをつけたものはコード4に該当する」としている。参考にした分類表においても、きざみ食の評価は分かれており、青森脳卒中地域連携パス協議会の「嚥下食対応表」では、とろみをつけないきざみ食については分類対象としておらず、能登脳卒中地域連携協議会の「食形態マップ」では食材の硬さや刻みの大きさによってコード4を6段階に、石川県栄養士会の「Iスケール」では食材の硬さや刻みの大きさ、とろみの有無によってコード4を12段階に分類している。しかし平成28年に我々が実施した北部地区管理栄養士へのアンケート調査の結果から、きざみ食の分類については、とろみ剤使用や食材の硬さよりも刻みの大きさで評価しているところが多く、本分類表では、コード4をきざみ食として、刻みの大きさから、小(5㎜未満)中(5~20㎜)大(20㎜以上)の3段階に分類している。
・主食について:学会分類では全粥や軟飯を対象としており、本分類表ではここに「アチビー」を分類している。
【コード5】
・学会分類ではコード5の分類項目はなく、一般的には「普通食」と評されるものである。しかし、要介護高齢者や消化器疾患などの人への食事配慮として、学会分類のコード4に含まれる、誤嚥や窒息、咀嚼などに配慮したものに加え、体力や消化、認知症への配慮として工夫したものを、本分類表では「配慮あり」としており、普通食を「配慮なし」として分類している。